【医療過誤裁判例】産科危機的出血・羊水塞栓症
2020.10.22お知らせ
東京地裁令和2年1月30日判決(医療判例解説vol,88)の備忘です。
「確かに、原告らは訴状にその旨記載したが、本件訴え提起前に被告医師からその旨虚偽の説明を受け、それを信じたことに基づく誤記であって・・・この点につき被告らの主張する自白が成立するしても、これを撤回する。」
との原告の主張に対して以下のとおり判断されています。
「仮に、この事実を過失の評価根拠事実として主要事実と解し、自白の拘束力が認められるものとしても、上記イのとおり、上記SIが0.76であることは真実に反し、かつ、原告らがこれを自白したことについては錯誤によるものと認められるから、自白の撤回が認められるべきものと解される。」
自白の撤回について判断を示しています。
次に、出血量を計測した記載について
「計測した出血量が「100」という極めて切りのいい数字が続くこと(上記4時間値の「200」を含めれば3回連続となる。)は不自然であることをも考慮すれば・・・実際の計測値を記載したものと認めることはできないというべきである。」
と判断を示している。
切りのいい数値が並んだ場合には、診療録だからとの理由で数字を全て信用するのではなく、数字自体の不自然性にも着目していく必要があります。
また、転院について、搬送決定から病院到着までの必要な時間の考え方について
「もっとも、限られた人員により、搬送の手配、診療情報提供書の作成、亡花子の家族への連絡といった種々の作業をこなす必要があることを考慮すれば、上記時間を大幅に短縮することは困難であったといえ、このような事情も考慮すれば、搬送決定からW病院到着までに必要な時間としては、最大で50分程度と認めるのが相当である。」
と判断を示しており、因果関係の判断において、転送に要する必要な時間を算出する際の参考となる。