弁護士 平井 健太郎大阪で医療過誤(患者側)の法律相談

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お知らせ

カルテの改ざんと民事事件での影響


2021.02.03お知らせ

カルテが改ざんされているのではないか、というご相談があります。

医療過誤の損害賠償を求める裁判では、本当に改ざんがあったのか、それを証明する必要があります。

本日は、裁判で改ざんが認められた場合に、裁判にどのような影響があるかを整理します。

 

医療過誤の裁判では、基本的にカルテに基づいて何が起きたのかという事実を整理していきます。

これはカルテが信用できることが前提とされています。

しかし、改ざんの事実が認められれば、カルテは信用することができなくなります。

そのため、医療機関側が、改ざんされたカルテに基づいて事実はAであると主張しても、カルテが信用できないのでAという事実も認められません。

また、医師等の証言も改ざん後のカルテに整合する内容が話されることから、医師等の証言も信用されないことになります。

 

この他に、改ざんが認められた民事裁判において、改ざんの事実が医師の過失を認定する上で不利益な事情になると判断しているものもあります(末尾記載の東京地裁平成15年11月28日判決)。

このように改ざんの事実は重要で裁判に影響を及ぼします。

ただし、裁判では改ざんの有無は一つの問題点になるかもしれませんが、それだけで勝敗が決するわけではないことに注意する必要があります。

 

(参考)

東京地裁平成15年11月28日判決

「しかしながら、原告X1について詳細な診療の経過が明らかにならないのは、被告が本件診療録及び本件麻酔記録をねつ造したという事情によるものであり、被告は、これらを自己の責任を免れようとする意図の下で行ったものといわざるを得ないところ、かかる行為は、法の予定していないところであり、民事訴訟法上の信義則にも違反するものとして到底許されるものではないから、原告らが主張するように、民事訴訟法224条2項を類推適用して、被告の本件手術によって原告X1に生じた重大な障害の結果について、被告の過失をいう原告らの主張を真実と認めるということも考えられないわけではないが、当裁判所としては、いまだそのような見解をとることに躊躇せざるを得ない。しかしながら、少なくとも被告クリニックにおける診療経過が明らかではないという不利益を原告らに負担させてその事態を引き起こした被告に有利に取り扱うことができないのはいうまでもないところであり、本件事故についての被告の過失を認定するに当たっての前提事実については客観的な証拠に反しない限り、原告らに有利に認定して過失判断を行うべきであるし、被告が本件診療録及び本件麻酔記録をねつ造したという事実は、被告の過失を認定する上で、被告に不利益になる事情であると考えられる。」

 

民事訴訟法224条2項「当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。」

同条1項「当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。」

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