【医療過誤裁判例】最高裁平成11年3月23日判決
2020.10.30お知らせ
所属している大阪医療問題研究会では2ヶ月に1回定例会が開催され、会員から事例の発表などが行われれています。
10月29日にも定例会が開催され、そこで最高裁平成11年3月23日判決が取り上げられたので内容を確認しました。
この事件は1審、2審では患者側が敗訴しており、最高裁で判決が破棄され、高裁に(もう一度審理するよう)差し戻された事案でした。
以下では気になった判旨を一部メモとして残します。
「結局、原審は、本件手術操作の誤り以外の原因による脳内出血の可能性が否定できないことをもって、前示のとおり、Aの脳内血腫が本件手術中の操作上の誤りに起因するのではないかとの強い疑いを生じさせる諸事実やその他の後記2の事実を軽視し、上告人らに対し、本件手術中における具体的な脳ベラ操作の誤りや手術器具による血管の損傷の事実の具体的な立証までをも必要であるかのように判示しているのであって、Aの血腫の原因の認定に当たり前記の諸事実の評価を誤ったものというべきである。」
「以上によれば、本件手術の施行とその後のAの脳内血腫の発生との関連性を疑うべき事情が認められる本件においては、他の原因による血腫発生も考えられないではないという極めて低い可能性があることをもって、本件手術の操作上の誤りがあったものと推認することはできないとし、Aに発生した血腫の原因が本件手術にあることを否定した原審の認定判断には、経験則ないし採証法則違背があるといわざるを得ず、右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。」
この最高裁判決は、具体的な立証の程度、鑑定結果や事実の評価の仕方について参考になる。
参考:判例タイムズ1003号